EOS R7発売から2週間、そろそろR7の特徴も掴んだので2回の連載でまとめたいと思います。
第1回 EOS R7で野鳥撮影 長所と短所
第2回 EOS R7で野鳥撮影 撮影のコツ
画質
高精細、高トリミング耐性
APS-C 3250万画素 6960×4640ピクセル。
これはフルサイズを含む現行のミラーレス一眼ボディとしては最も精細。
フルサイズセンサーなら8000万画素にあたります。
(8000万画素フルサイズセンサーをAPS-Cクロップすると3250万画素程度ということ)。
更にCanonのセンサーにはローパスフィルターがありますので、モアレの発生しやすい野鳥の羽毛でも偽色が発生しにくいという特徴があります。
精細さは落ちるらしいのですが、高画素なせいかそれを感じさせません。
また、3250万画素という画素数はさらにトリミングできる十分なトリミング耐性もあります。
フルサイズでもAPS-Cサイズ以下にトリミングするのが当たり前の野鳥撮影において、APS-C高画素は非常に野鳥撮影向きのセンサーと言えます。
ISO耐性
ISO320はもちろん問題のない画質ですが、ISO2500でもこのくらいは写ります。
ただ、ISO2500の方はディテールがかなり潰れているのがわかると思います。
ISOとしては
- 羽毛が見えるくらいまでトリミング:~ISO800
- 野鳥の全身+くらいでトリミング:~ISO1600
- 野鳥を風景とともにトリミング:~ISO3200
くらいが目安のように思います。
ISO6400からは全体的にノイズが目立って像が崩れだしますので少し厳しい印象です。
まぁ、この辺は正直なところレフ機時代とそんなに変わりませんね。
ノイズ処理が優秀になったかな…?くらいです。
ちなみに「フルサイズの方が綺麗でISO耐性が高い」と思っている方がいると思いますが、野鳥撮影においてはそれは間違いです。
「被写体に近づいて撮れるならばフルサイズの方が綺麗でISO耐性が高い」というのは正しいように思いますが、そもそも野鳥に自由に近づけるならだれも苦労はしていないわけです。
精細さを機材でカバーしようにもAPS-C + 600mmF4でもトリミングが必要な場合が多い被写体ですので、仮に同じ大きさや明るさで撮ろうした場合、フルサイズ + 960mmF4という非現実的な超大砲が必要になります。
テレコンx1.4をつけてフルサイズ + 600mmF4 + Extender x1.4 …となってくるとレンズは暗くなるし解像力も落ちるしで本末転倒ですね。
よくYouTubeやブログで警戒心の薄い鳥や大きな鳥(サギやカラスなど)をフレーム一杯にいれて、画質の比較をしている方がいるのですが、あれってはたして意味あるんでしょうか…?
ブレに敏感
上の2枚の写真うち、下の写真ではブレが発生しています。
※スマホではわからないかも知れません。
これは上でブレていた写真のノートリミングです。
このサイズ感で鑑賞するならばブレはあまり気になりません。
R7は低画素機では気づかないようなブレも敏感にとらえてしまいますので対策が必要です。
次回の撮影のコツの方でも書きますが、EOS R7はオールマイティカメラではありません。
特にシャッターやドライブまわりでは気を付けないといけない点が多くあります。
また、そもそも野鳥撮影ではブレを抑えるために注意せねばならない点も多くあります。
ただ、R7はそれらを守ればブレのないシャキっとした写真を撮れますので、撮影者の知識が必要なボディなようには感じています。
ちなみに、α1はそういった欠点があまりないオールマイティカメラなように感じました。
お値段4倍の~80万円ですが 😛
解像力の高いレンズが必要
Canon内の超望遠レンズのMTFチャートを比べてみます。
SONYのレンズの方がMTFチャート的に優秀と思っている方は、レンズのMTFチャートの罠を読んでください。
MTFの読み方はCanon公式でどうぞ。
RF600mm F4L IS USM (EF600mm F4L IS III USMと同)
EF600mm F4L IS III USM + Extender x1.4
RF100-500mm F4.5-F7.1L IS USM
RF600mm F11 IS STM
RF800mm F11 IS STM
RF100-400mm F5.6-F8 IS USM
私はRF800mm F11以外は所持して使ったことがあるのですが、おおむねMTFチャートと体感は一致しています。
焦点距離が長くなると解像力的には厳しくなるかわりに大きく写せますので、単純には比較できないのですが、使ってみての体感としても上から解像力の高い順になっています。
RF600mm F4L IS USMはぶっちぎりです。
Extender x1.4をつけて840mmでも、RF100-500mmの500mmより高い性能となっています。
以前撮り比べた写真がありますので気になる方はどうぞ。
いつも思うのですが、600mmF5.6くらいの丁度いい単焦点レンズほしいんですよね..。
Canonは中間性能のレンズが全くありません。
Nikonには800mmF6.3という野鳥撮影的に丁度よい最高なレンズがあるんですが。
R7のレンズの選択で難しいのは
- R7は画素ピッチが非常に狭いため解像力のないレンズではかなり厳しい写りになる
- 逆に解像力のあるレンズではより精細に写るので焦点距離以上の性能を発揮できる
という点で、レンズ性能で撮影結果が二極化するところです。
つまりフルサイズくらいの画像ピッチで使うと綺麗だけど、R7などの高精細なAPS-Cで撮ると解像感が気になるという境界ラインがあります。
私の感覚としては、RF100-500がそのラインかなという印象。
もちろん普通に鑑賞する分には、R7との組み合わせで上記のどのレンズでも綺麗に写ります。
拡大やトリミングして羽毛までクッキリ描写したいならば…の話です。
RF600F11以下はR7ではレンズの解像力が不足している気がしますので、フルサイズでの撮影の方が綺麗かもしれません。
RF100-500mm F4.5-F7.1は、軽量/コンパクトにも関わらず非常に高いスペックになっています。
500mmというのは近年の野鳥撮影では少し物足りない焦点距離なのですが、APS-Cで高精細なR7と組み合わせることで35mm換算800mm 3250万画素になり、野鳥撮影にも使えるようになる良い例ではないでしょうか。
海外のレンズレビューでも評価されていますが、こんな性能のズームレンズは他にはないように思います。
RF100-500にExtender x1.4をつけると、画質がかなり落ちる上にF10になってしまいますので、実用的ではありませんから、R7だからこそというレンズです。
以前にα1 + FE200-600で撮っていた時期がありました。
R7 + RF100-500はそれと同格くらいの画質ですが、ちょっとレンズが暗いかわりに非常にコンパクトで軽量という感じです。
ボディ込みで2kg以下という考えられないほど軽量なものですので、フットワーク軽く気軽に野鳥を撮りたい方にはオススメします。
AF性能
精度
R7のAF精度は非常に高いです。
精度というのはちょっと漠然としていますが、野鳥撮影をしていると「これは綺麗に写せそう」というシチュエーションがあると思います。そういうシーンでピントを外すことはほぼありません。
その中でも、瞳にピントが合ってるものが8~9割、身体に合っているものが1~2割という感じでしょうか。
ロクヨンで撮ると被写界深度が薄くて、近くの被写体は瞳のあたりになかなかピントが合わないのですが、R7ではほぼ瞳にガチピンです。
レフ機の時は、鳥の瞳にピントを合わせようと思うと至難の業でした。
瞳に合わせてからピントを外さないようにレンズをうまく振るか、AFフレームを移動させる必要がありましたが、R7はトラッキング+瞳認識があるので恐ろしいほど楽です。
また、R5などのフルサイズ機ではAPS-Cクロップ時にAF精度が著しく低下するのですが、もちろんR7はそういうのは感じられません。
トラッキング性能
R3譲りのトラッキングアルゴリズムで文句なしに高性能です。
この写真なんかはいい例なのですが、鳥がかなり中心から下にいるのにガチピンですね。
これは初め中央で鳥をとらえたものの、動いていく鳥を追ってレンズを振るうちに、中央からそれてしまった感じです。
それでも掴んだ鳥のピントを離さずに、フレームのどこに鳥がいても、その鳥の瞳にピントを合わせてくれています。
トラッキングはα1で初めて触ったのですが、R7のトラッキングも遜色のない出来なのではないかと思います。
レフ機からミラーレス機にかわって最大のゲームチェンジ要素ですね。野鳥撮影の方法そのものが変わります。
AF演算周期
なんでヒヨドリ…という感じですが、週末にはカワセミポイントに通っているものの、運悪く営巣時期で全然飛び込んでもらえず…。また撮れたらこのブログでアップします。
AFの初動は1DX2などと比べると少し遅い気もしますが、困らないレベルです。
きっとR3などではとても快適なのでしょうが、普通に使えるくらいのスピードかなと思います。
「あ、ヒヨドリが飛び込んでる」と思って瞬時にレンズを振って撮ったのですが、すべて目にガチピンです。
2枚目なんかがわかりやすいですね。
見てわかる通り、ヒヨドリも前に進んでいるのですが完璧に追いかけてくれています。
Canonが公式で書いていますがR3はAF演算周期は最高1/60秒ということです。
R7はそもそものセンサー読み込み時間が1/30秒ですので、最速でも1/30秒、もしかしたら1/15秒~1/20秒くらいのAF演算周期と思います。
※どこかで仕様をみかけたらまたアップします。
掴むまでは若干R3と比べて遅いかもしれないものの、トラッキングが優秀なので、1度掴みさえすれば気にならないという感じですね。
ミラーレスカメラAFの罠
こちらで解説しているのですが、ミラーレスカメラのAFは「ピントが背景に抜ける」「明らかにAFエリアに被写体がいるのにAFが全く合わない」といったような現象がよく起きます。
像面位相差AFではどうしようもない症状らしいのですが、
正直EOS R5使っていた時は、ちょっとミラーレスカメラで野鳥撮影は厳しいんじゃないか?
というくらいの印象でした。
ただ、α1を使っていた時はそこまで問題はなかったのでトラッキングが重要なんだろうなとは薄々感じていたため、EOS R7の発売を心待ちにしていたという経緯が。
一時期は本気でR7でダメだったら一眼レフに戻ることも検討していました 😛
EOS R7にかわってから、たまにAFでピントが合わないことはあるものの、背景にピントが抜けていったり、何をやってもAFでピントが合わないということは、ほぼありません。
上の例でもクロツグミにしっかりピントがあってトラッキングもできました。
像面位相差AFの性能がアップした….というよりは、おそらくトラッキングなどでAFの処理フローが良い方向に変わったことが大きいと思っています。
どうしても解決できないパターンとして、近くの枝に鳥が止まっているときに、奥の方にピントが合っている場合には、AFがどうやっても手前の鳥の方に合ってくれない…というのはあります。
これについてはMFで鳥の近くまでピントをもっていってからAFをONすることでほぼピントが合ってくれますので、素早くMF、もしくはピントを近くに持ってこられる細工をしておけばリカバリはできます。
少なくともこの2週間、R7で撮っていてストレスを感じたことはありませんので、像面位相差AFの性能が根本的に向上するまで(クアッドピクセルCMOS?)はやっていけそうです。
余談ですが、R7では被写体前後の狭い範囲でサーチ駆動がかかるような挙動がよく見られます。
「そこに何かいるけどピントが合わないなぁ」という感じで探しているような感覚です。
画像認識でそこに何か物体があるのはわかっているけど像面位相差AFでうまくピントが合わない状態な気がしていて、こういう機構がピントが吹っ飛ぶような挙動をおされてくれているんじゃないかなと思っています。
丁度いい写真が撮れましたので、狭い範囲でのピント合わせはこの投稿をみてもらえたら。
カワセミ EOS R7 + RF600mm F4L IS USM今日も天気予報を眺めつつ...。 ほぼ曇り時々雨で全滅だったので午後から京都の川へ。 そして残念ながらカワセミは飛行通過してしまったので、あきらめて地元の秘密の場所へ。 こちらは飛び込みをまだ撮ったことのない場所で、まだ良い撮影位置を試...
連写
ローリングシャッターの歪み
電子シャッター時のローリングシャッターの歪みは盛大に発生します。
これは積層型センサーにしないとどうしようもないところがあって、非常にお高くなるためR7IIあたりに期待しましょう。
これに関してはもう割り切って使うしかありません。
R7IIが発売される頃には、積層型センサーも安くなっていることでしょう 🙂
連写バッファ
R7では、30コマ/秒はバッファ的にもちょっと厳しいです。
と、いうわけで15コマ/秒で約4秒の連写がバランス的に最適かと思います。
野鳥撮影における4秒は比較的長いので、飛び込みやとまりものを撮っていて足りないと感じることはあまりありませんね。
その他の特徴
おおむね野鳥撮影で気になる特徴は上記までなのですが、ほかについても気になったところを挙げたいと思います。
バッテリー持続時間
と、いろいろ書いていますが、R5使っていた時と比べて倍くらいもちます。
野鳥撮影は縦で撮ることは少ないので、縦グリップがないのは全く気になりません。
ダイヤルが1つ少ない
https://cweb.canon.jp/eos/lineup/r7/feature-reliability.html
ダイアルの位置が変わったのは正直どうでもいいのですが、
R5と比べるとカスタムできるダイヤルが1つ少ないのがかなり厳しいです。
私の場合はMモードベースで、
- シャッタースピード
- 絞り
- 露出補正
をダイヤルで調整していたので設定にはかなり苦労しました。
ファインダー解像度、液晶解像度
ファインダーはドット数が少ないように感じますが、撮影しているときは特に不満は感じません。
ただ厳しいのは撮影した写真の確認で、CanonはRAWに保存されるプレビュー品質がひどいのか、ファインダー解像度のせいなのか、現場ではシャキっと撮れたのか、ノイズがどのくらいかなどは全く確認できません。
まるでフィルム時代に戻ったかのような、現像するまでわからないドキドキ感が味わえます 😛
まとめ
EOS R7を約2週間ほど使ってみてですが、ようやく使いこなせるようになってきました。
EOS R7はSONY α1のようなオールマイティカメラでは決してありませんが、
「野鳥を撮る」という点においては非常に優れたカメラであると言えます。
R3は動体を撮るには良いのですが「野鳥撮影」という用途では少し画素数不足に感じます。
EOS R7の長所は、
- 高精細でトリミング耐性が高い
- AF精度が高い
- AFトラッキングが高性能
で、野鳥撮影に必須であるこれらのスペックはフラグシップ機に勝るとも劣らないものです。
- 解像力の高いレンズが必要
- ブレに敏感
- 連写バッファ容量が小さい
- ローリングシャッターの歪みが大きい
逆に短所も多くあり、このあたりは撮影者の対応が必要になってきます。
ただ、これらは長所に比べると「まだなんとかなる」ものです。
そして、とにかく価格が安い。
18万くらいでここまで野鳥を撮れるボディはこれまでなかったのではないでしょうか。
そろそろフジフィルムからX-H2SというR7の上位互換のようなボディが発売されます。
こちらは30万を超えています。
また、レンズの選択肢に乏しいためボディは優秀でも実際的には厳しいと思っています。
同時に発売される150-600mmF5.6-8も、少し暗いのとMTFを見る限りは厳しい感じがしました。
CanonはRF100-500mmで満足できなければ、ロクヨンを買うという最終選択肢がありますし、中古でEFレンズを使うという選択肢もあります。
フジがAPS-C用の600mm F4でコンパクトなものを発売してくれたら傾くかもしれませんが 🙂
さて、どうだったでしょうか?おおむね作例をまじえて紹介できたかなと思います。
次は、実際のR7での野鳥撮影におけるコツのようなものをまとめたいと思います?