EOS R7を使い始めて気づけは半年。
レンズはRFロクヨンから始めてなぜか今はEFレンズ、EOS-1D X mark IIも使っているというおかしな流れですが、野鳥撮影における長期使用レビューをまとめたいと思います。
EOS R7の良い点
歩留まり良く、超精細に撮れる
この6ヶ月使ってみて、EOS R7が凄いのは「APS-C 3250万画素という圧倒的な解像力と、それに瞬時に正確にピントを合わせることのできるAF性能」と感じています。
精細さについては、フルサイズ2000万画素+800mm での撮影と、R7 + 400mmでの撮影が解像力的には大体同じくらいと考えると、そのすごさがわかると思います。
たまにR7は3250万画素だけどそんなに解像しないとか言う話も見かけますが、実際撮ってる感じだとそんなことはなく、相応に解像しています 😛 レンズ依存?
レンズを選ぶ
ただしAPS-C 3250万画素という狭い画素ピッチで撮るためには、レンズの解像力が必要となります。
MTFチャートは他社のものと比べても意味がないので注意しましょう。
本気でお金をかけて野鳥撮影するならばRF600mm F4L IS USM / RF800mm F4L IS USMあたり。
本気撮影で、機動性を重視するなら、EF400mm F4 DO IS II USM。
散策ならばEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM、お手軽に済ませたいならEF400mm F5.6L USM。
というような選択になるんじゃないかと思います。
EF400mm F4 DO IS II USMという選択
体力のある方には大口径のヨンニッパ、ロクヨン、ハチゴローあたりをオススメしますが、どうしても3kgくらいになるのと口径も大きいため、山や森で持ち歩いての撮影には不向きです。
EOS R7は600gくらいなので、EF400mm F4 DO IS II USMとの組み合わせでは合わせて2.7kgくらい、丁度よい重量でサイズもそこそこ、画質は最高ということでとても良い組み合わせと感じています。
三脚を使うならテレコンをつけて高画質な560mm F5.6というスーパーレンズになりますし、EOS R7で最高連写速度の出るレンズの中にも含まれているため、カワセミの飛び込みも十分撮影できます。
MTFチャートをみてもわかると思いますが、マスターレンズならばロクヨン並みの解像力があり、Extender x1.4をつけてなお、高い解像力があります。
DOレンズは逆光に弱いという特性はあるんですが、逆光で頻繁に野鳥を撮るのは実際のところ芸術写真家くらいだとは思うのであまり気になりません 😛
EOS R7以外ではちょっと焦点距離&解像力が足りないのですが、EOS R7と組み合わせることで非常に強力な野鳥撮影装備となるレンズです。
もうディスコンではあるんですが、2029年2月まで修理期間がありますしこのレンズはかなりオススメです。
AF性能
AF精度
ミラーレスのAFの罠についてはいろいろ書いてますが、それでもなおEOS R7のAF性能は非常に高いと言えます。
この写真もかなり近距離なのですが、トラッキング+瞳AFがないボディではなかなかここまで目にピントは合いません。
一眼レフでは暗くて厳しい場面でも、R7ではしっかりピントが合います。
トラッキングがない頃は「一度中心でピントを合わせて、AF-OFFにして構図を決めてシャッター」もしくは「被写体を置きたい位置にAFエリアを移動させる」というようなちょっと残念な操作をしていましたが、トラッキングがあると「中心で被写体をとらえて、あとは構図を決めるだけ」になります。
トラッキングで野鳥撮影の方法が根本から変わります。
AFスピード
AFスピードはこれまでのミドルクラスに比べると非常に高速で、ハキハキと動きます。
ただ、R3や1DXなどのフラグシップ系より遅いので、カワセミのダイブなど超高速な撮影では注意が必要です。
「カワセミを撮れないのか?」というとそういうわけではなく、RF600mm F4L IS USMなどの高速なAFを持ったRFレンズだと安心して撮れる感じです。
EFレンズを使う場合はRFレンズほど高速なレンズ制御ができないようなので、少なくとも 最高連続撮影速度に対応しているレンズ を使いましょう。
それ以外のEFレンズの場合は、おとなしく価格が安くなってきているEOS-1D X mark IIなどを使った方が安定します。
もちろん撮れないわけではないですが、相応に苦労する感じですかね。
RAW現像に強い
私が感じているもう一つの特徴は「EOS R7はRAW現像耐性が非常に高い」という点。
ISO耐性は高いとは言えないのですが、例えばその分EVを普段から-1か-2にして撮ってもディテールが潰れないため、RAW現像時に安心して調整できます。
そしてやはりAPS-C 3250万画素はAPS-Cでクロップされてなお、トリミングやシャープネスをかけることができる画素数があります。
EOS 90DはAFが厳しかったのでそんなに使ってなかったのですが、少なくともEOS 7Dや7D mark IIなどと比べると歴然とした差があります。
トリミング耐性が高く、かつそこからでもRAW現像時にEV補正やシャープネスなどをかけられるダイナミックレンジ、この辺りがEOS R7が出す画質を下支えしています。
価格が安い
EOS R7の良い点として、大きなファクターに「価格が安い」ことがあります。
いまはいろんなものが値上がりして、特にフルサイズのボディはEOS R5でも一眼レフのフラグシップ並みのお値段となっています。
そんな中で17~18万円でここまでの性能のボディは非常にコスパが良いです。
今はミラーレスはまだまだ過渡期で新機種が発売されるたびに、前の機種が時代遅れになるような状況です。
そんな中ではボディよりも長く使えるレンズにお金をかけた方が良いため、ボディはR7で安くすませてレンズにお金をかけるというのは非常に良い選択肢だと思います。
EOS R7の悪い点
高感度耐性
画素ピッチが狭いという事は、画素当たりのセンサー面積が小さいという事ですので、受光量が少なくなるため高感度耐性が低くなります。
EOS R7はISO1600が概ねの鳥撮りの限界ISOなんじゃないかと思います。
かなり大きくフレームに入れることができれば、ISO3200もなんとかいけますが。
またISOは400と800で差を感じるくらいですので、できる限り低い値で撮りましょう。
飛びものはシャッタースピードが必要なため、ISOが高くなりがちです。
ブレやピントにシビア
精細に撮れるということは、よりブレやピントにシビアという事です。
RFレンズは超強力な手振れ補正があるので問題ないのですが、古いEFレンズでは気合をいれてホールドするか、SSを上げるかしないといけません。
ローリングシャッターの歪み
EOS R7のセンサー読み取りは1/30秒という長い時間がかかります。
そのため電子シャッターでは盛大にローリングシャッターの歪みが発生します。
右上にひっかき傷のようなものが見えると思いますが、センサーは上から下に読まれていくので、鳥が羽を振り下ろすスピードの方が速いためこのような現象が起きます。
メカシャッターでは1/250くらいのスピードで先幕が下りるため、野鳥撮影ではこのようなことはほぼ起こりません(ただ、振動による微ブレのようなものが起こりやすいですが)。
デフォーカス
これは、R7に限った話ではなくミラーレス全般で起こる現象です。
あまり失敗時の写真は残さないのでデフォーカスの説明はしづらいのですが、オレンジの場所にとまっていたクロツグミにAFしようとしても一切合わず、後ろの明るい木にピントがもっていかれ続けるといった現象が起きます。
最終的にMFでなんとか手前の木あたりまでピントを持ってきたものの、飛ばれてしまったという感じです。
ミラーレスでは「遠近に関係なくハッキリしたものにピントをとられやすい」という特徴があります。
近くのものはボヤケてしまってモノとして認識されないので、遠くにピントが合ってしまうんですね。
EOS R7で随分ましになりましたが、EOS R5を使っていた時はストレスで発狂寸前でした 😛
おそらく一眼レフからミラーレスに移って森やなんかで鳥を撮るとかなりビックリすると思いますので、心してください 🙂
「目の前に鳥が止まってくれてるのに全然ピントが合わない、なんで!?」
ってなると思います。
被写体別の撮影所見
カワセミの飛び込み
デフォーカス、AFの特性
ミラーレスAFの罠で何度か書いていますが、
「遠近に関係なく、ハッキリしたものにピントをとられやすい」という特徴がミラーレスのAFにはあります。
どうしても近くのものはボケて遠くの背景などはハッキリとするため、「背景にピントを持っていかれやすい」という事になります。
もちろんその中でもトラッキングで掴み続けられたり、動物認識が効けばよいのですがカワセミほどのスピードだとなかなか難しいというのが現実です。
上の写真ではかなり真ん中にカワセミをとらえているのですが、AFは全く作動しませんでした。
この場合はすべてボヤけていて、どれにピントをあわせたらいいか判断できなかったのかもしれません。
一眼レフの場合は「ある程度ボケてても、近くのものにピントを合わせる」というAFですので、水しぶきにピントは持っていかれがちなものの、もの凄い速さでピントを合わせてくれます。
上の写真では2コマ目、EF800mm F5.6L IS USMという古いレンズにも関わらず、33ミリ秒くらいでピントを合わせてくれています。
一眼レフは難しい画像認識やトラッキングはできませんが、単純なAFは非常に高速です。
カワセミくらい高速な撮影になると少なくともR7ではトラッキングなどは全くついてこれませんので、撮り方に工夫が必要になります。
※R3やR6 IIはAF演算周期が速そうなのでついていってくれるんじゃないかという期待があるのと、EOS R6 mark IIはAFが0.03秒、つまり33ミリ秒くらいというのをうたっていますのでカワセミに対応できるのかもしれません。
ただ、フルサイズの2000万画素位なら1DXで良いかなっていう気もします。
サーボAF時のピント/レリーズ優先
ミラーレスはこの設定がないように思います。
何が起こるかというと、ピントがあってないときにシャッターを切れないので、連写が妙に遅かったり、全然シャッターがきれなかったりします。
カワセミとかを撮ってるとこれが致命的で、あの1,2秒間でシャッターのテンポが狂うとフレームに被写体をとらえつづけるのは困難です。
「ピントが合ってないならレリーズできなくていいんじゃ?」という考え方もありますか、そもそも対象が水しぶきに行っていたりするので、ピントが合っていないときでもカワセミにジャスピンという可能性も全然あります。
これはどこか別の場所に設定があるのかもしれませんが、ちょっと困っている問題です。
ヤマセミ、猛禽類
ヤマセミや、猛禽類くらいになるとEOS R7で十分にAFは間に合います。
トラッキングはちょっと怪しいですが、トラッキングOFFで撮ればまず間に合っているはずです。
その他、とまりものなど
トラッキングがきく被写体ならば、EOS R7はほぼ万能といって良い性能です。
エナガなどはちょこまかと飛び回るのでレフ機時代では、瞳にピントを合わせるのは至難の業でした。
かなり暗い場所なのですが、暗部までしっかりとディテールが残るので非常に精細です。
ここまで精細だとあとから現像するのが楽しくなりますね。
まとめ
EOS R7を半年つかってみて、あらためて良いカメラだなぁと思います 🙂
EF800mm F5.6L IS USMを活用するためにEOS-1D X mark IIを購入したのですが、カワセミ撮影以外ではやはりEOS R7の方が野鳥撮影に向いている感じがしますね。
ただ、レフ機はミラーレスにない強力な長所がいくつかありますので併用していくのが良いかなという気はしています。
そろそろEOS R6 mark IIの発売ですね。
大体はEOS R6にR7同様の機能を盛り込んだと考えて、ほぼ間違いないように思います。
1年後くらいにはEOS R1の話題で盛り上がっていそうですが、今後どこまでミラーレスが進化するか見ものですね。