この記事について
野鳥撮影の機材を探していると、「このレンズは解像する」「新型は旧型よりシャープ」といったレビューをよく目にします。
しかし、同じレンズでも人によって評価がまるで違って混乱することがありますよね。
この10月、SONYがFE600mm F6.3 GM OSSという凄いレンズを発売しました。
ただ何が凄いのかを把握できないと、せっかく60万円以上の大金を支払っても期待外れな場合があります。
レンズの基本知識を知っておけば、新しいレンズが発表されたときに公開されている数値から自分の機材での写りをある程度イメージできるようになりますので、レンズ性能を測るうえで着目した方が良い点を簡単に解説したいと思います。
今回は主にレンズの解像力の評価についてです。
なお、私は光学系は専門ではありませんし、間違いもあるかと思いますが気になったところは自分で必ず裏付けをとるようにしてください🫡調査と体感からの記事です
1. 同じF値でも無限に解像力を高められるのか?
私は野鳥撮影を始めた頃は「レンズってメイカー努力でどこまでも解像力上げられるんじゃないの?」と思っていました。
結論から書くと、解像力にはF値で決まる光学的な限界があります。
レンズの像がボケてしまうメカニズムは、大きく分けて収差と回折の 2 つです。
収差は設計と製造の努力でかなり改善できます。
高価なレンズほど、特殊なガラスや複雑な設計で収差を徹底的に抑えている感じですね。
一方で回折は光が波であることから生じる現象で、これは避けることはできません。
どんなに収差を減らしたレンズでも「F値に依存する回折の壁」を超えられません。
高価なレンズが目指せるのは、「その限界値の壁にどこまで近づけるか」です。
つまり、レンズのF値がわかった時点でセンサー上での解像力の上限は確定してしまうわけですね。
2. 解像力を低下させる2 つの原因:収差と回折
2-1. 収差
理想のレンズなら、1 つの点から出た光はセンサー上の 1 点に集まります。
実際のレンズでは、レンズのどこを通ったか、どの色の光かによって集まる位置がずれます。
これが収差です。
代表的なものを 3 つ挙げます。
・球面収差
レンズの中心付近を通る光と周辺を通る光が、別の位置に集まる。
絞ると周辺の光がカットされるので改善しやすい。
・コマ収差
画面の周辺で、点が彗星のように尾を引いて写る。
これも絞ると改善しやすい。
・色収差
色(波長)によって屈折の仕方が違うため、色ずれやにじみが出る。
軸上色収差は絞ると目立ちにくくなるが、倍率色収差は絞ってもほとんど改善しない。
収差はレンズの設計ごとにどのように出てくるかが違います。
つまり収差の補正はレンズの解像力を評価するうえで重要なファクターということになります。
ただ最近は歪曲や倍率色収差はデジタル補正で大きく改善できるので、それ込みで設計されてたりしますね
2-2. 回折
光は波なので、絞り(開口)を通るときに少し広がります。
これを回折といいます。
そのため収差がゼロのレンズでも点光源は 1 点にはならず、中心が明るく周りに淡い輪がある小さな円になり、これをエアリーディスクと呼びます。
収差がレンズごとに違うのに対して、回折は同じF値・同じ波長なら、どのレンズでも基本的に同じです。
また画面端にいくにつれて口径食で光の通り道が一方向に細くなって、その方向の回折が増えるのと、残った収差も加わって解像力が低下します。
口径食は抑えることができますので、こちらはレンズの解像力を評価するうえで重要なファクターとなりますが、それでも回折の壁を超えることはできません。
3. 回折の大きさは、焦点距離の影響を受けない
エアリーディスクの直径(中心の明るい円盤の外側の暗い輪まで)は、次の式で概算できます。
直径 ≒ 2.44 × 波長 × F値
式に焦点距離が入っていないことに注目してください。
400mm F8 でも 800mm F8 でも、センサー上の回折のにじみは同じ大きさです。
※無限遠付近を撮る場合...野鳥撮影では被写体が遠いので無限遠と大きな違いはない
なお直径が 2 倍になったからといって、写真の解像度が単純に半分になるわけではありません。
回折は「ある F値を超えると急に解像しなくなる」ものではなく、F値が大きくなるにつれて細かい模様のコントラストから順に少しずつ低下していきます。
この「どの細かさで、どれだけ低下するか」を表すのが、後で説明する MTF です。
4. 同じF値なら、焦点距離がのびると相対的に回折の影響は小さくなる
| 400mm F8 | 800mm F8 | |
|---|---|---|
| 回折のにじみ(センサー上) | 約 10.7µm | 約 10.7µm |
| 鳥の像の大きさ | 1 倍 | 約 2 倍 |
| 鳥に使える画素数 | 1 倍 | 約 4 倍 |
| 鳥の大きさに対するにじみの割合 | 基準 | 約半分 |
400mmと比べて800mm では鳥が 2 倍の大きさで写るので、羽毛 1 本あたりに対する回折のにじみは相対的に半分になります。
ここで大事なのは、同じF値ならば400mmだろうが800mmだろうが回折の大きさは変わらないという点です。
そのため被写体を大きく写せるぶん、細部の記録では有利になるというわけです。
ただ「同じF値で焦点距離が倍」になるとレンズも大きくなって、軸上色収差を抑えるのが難しくなり、求められる精度も跳ね上がり、お値段もサイズも重量も数倍に跳ね上がります😇
5. ボディの画素ピッチと回折
さて、ここまでF値と焦点距離の話でしたが、ここでもう1つの要素が加わります。
レンズが作る像のにじみ(回折)は基本的にF値で決まります。
一方、そのにじみをセンサーがどのくらい記録するかは画素の大きさ(画素ピッチ)で決まります。
| ボディ | センサー | 画素ピッチ | 記録できる細かさの上限 |
|---|---|---|---|
| EOS R1 / EOS R6 Mark II | フルサイズ 約2400万画素 | 約 6.0µm | 約 83本/mm |
| EOS R5 Mark II | フルサイズ 約4500万画素 | 約 4.4µm | 約 114本/mm |
| EOS R7 | APS-C 約3250万画素 | 約 3.2µm | 約 156本/mm |
F8 の回折像(直径 約10.7µm)を、それぞれの画素と同じ縮尺で重ねると上のようになります。
R1 や R6 Mark II では約 1.8 画素分、R5 Mark II では約 2.4 画素分、R7 では約 3.4 画素分です。
画素が細かいボディほど回折のにじみが、より周囲の画素にはみ出てしまうことになります。
つまり画素ピッチが大きいボディは「回折のにじみが気にならないくらい粗い」ということですが「粗い」というのは用途による相対的な評価で、必要十分な画素数が確保できているなら問題ないわけですね。
つまり画素ピッチが大きいボディでは等倍でみても「F8だけど十分シャープ」と評価されたレンズが、画素の細かいボディでは等倍でみると「解像力が足りない」という評価になることは当たり前のようにあります。
これが同じレンズの評価が人によって分かれる原因の1つです。
「違うボディで使うとレンズの解像力の評価は全く違う」ということですね。
6. MTF の読み方
レンズの解像性能を数値で表したものが MTF(Modulation Transfer Function)です。
白黒の縞模様を撮ったときに、そのコントラストがどれだけ残るかを 0〜1 で表します。
1 なら元のコントラストがそのまま、0 なら縞が完全に灰色に潰れて見えない、という意味です。
縞の細かさは「1mm の中に何本の縞があるか」で表し、これを空間周波数(本/mm)(lp/mm)と呼びます。キヤノンの MTF 図では 2 つの細かさが示されています。
- 10本/mm(黒い線):比較的大きな構造のコントラスト。抜けの良さ、メリハリに関係する。
- 30本/mm(青い線):細かい構造の再現性。解像感に関係する。
横軸は画面中心からの距離(像高、mm)です。
0 が画面の中央、右へ行くほど周辺になります。
フルサイズなら約 21.6mm が四隅、APS-C なら約 13.4mm が四隅です。
MTFの実線と破線は、縞の向きの違い(放射方向と同心円方向)です。
2 本が離れているほど周辺で点が流れたりボケが乱れたりしやすい、と読めます。
野鳥撮影では鳥を画面の中央付近に置くことが多いので、この記事では画面中央付近(横軸 0)の 30本/mm の値を中心に見ていきます。
7. キヤノンレンズのMTFとその傾向
7-1. 幾何光学的 MTF と波動光学的MTF
MTFには大きくわけて2 種類あります。
左がSONYのロクヨンで幾何光学的MTF、右がCanonのロクヨンで波動光学的MTFです。
当たり前ですが大手メイカーのフラグシップレンズの性能でこんなに差があるはずもなく、これはMTFの計算方法が全く違うためです。
| 幾何光学的MTF | 波動光学的MTF | |
|---|---|---|
| 光の扱い | 直進する光線として扱う | 波として扱う |
| 収差 | 含む | 含む |
| 回折 | 含まない | 含む |
| 収差ゼロの理想のレンズ | すべての細かさで 1(100%) | F値で決まる回折の限界まで |
| 周辺の口径食 | 欠けた部分の光線が計算から外れるだけなので、MTF は下がらない(収差の大きい縁の光線が減るぶん、上がることもある) | 開口が欠けた方向は F値が大きくなったのと同じになり、回折が増えて MTF が下がる |
幾何光学的MTFは回折を無視するので高画素のボディで使ったときの実感とずれやすく、F値の違うレンズ同士を比べるのには向きません。
また大砲レンズではほぼ1.0付近に張り付くので、MTFを見ても1.0にはりついていて何もわからないということになりがちです。
対して波動光学的MTFは回折も含めて計算するので、どんなに優れたレンズでも、そのF値の回折限界を超える値にはなりません。
またどのレンズでもグラフに目視で比較できる程度の違いができるので、CanonのMTFは他のCanonレンズと比較する場合には非常に有用です。
※CanonのMTFとSONYやNikonのMTFチャートの数値をそのまま比べても意味がありません
※波動光学的MTFが端にいくほど解像力が低下する理由
幾何光学的MTFは画面の端でも解像力がほぼ低下していないように見えるのに、波動光学的MTFでは大きく低下しているように見えます。
これは主に、MTFに回折を含めていないか含めているかの違いです。
レンズは一般的に周辺では口径食で光の通り道が一方向に細くなり、その方向ではF値を絞ったのと同じように回折が増えるからです(Canonの図では主に破線が下がります)。
この回折も幾何光学的MTFは加味していないので、大砲レンズならほぼ1.0に張り付いて見えるわけですね...つまり幾何光学的MTFって収差がどれだけ補正されているかだけを確認するものですね。
そんなの大砲だとほぼ補正されてるので、ほぼ意味ないゾと。
7-2. 大砲のMTFを実際に確認
では改めてキヤノンの大砲のMTFを確認してみましょう。
F4レンズをいくつか集めてみましたが、当然ながら焦点距離に関係なく理論値を少しだけ下回るところにあり、上回っているものはありません。
ここまで書いた通り、F4の大砲ならばどのレンズもF4の理論値に非常に近い値を示しており、大砲については画面中央の収差が非常に高いレベルで抑えられているということになります。
実際のところEF II型以降の大砲は、マスターレンズでの解像力差は同F値ならほぼないですね。
ただ近年は解像力よりもサイズや重量の方に力を入れているレンズが多く、たまにRF800mm F5.6L IS USMのような例外があるので「大砲だから大丈夫」というわけではありません。
7-3. F値ごとの理論値
| F値 | 30本/mm | R1・R6 II の上限 (約83本/mm) |
R5 II の上限 (約114本/mm) |
R7 の上限 (約156本/mm) |
|---|---|---|---|---|
| F2.8 | 94% | 84% | 78% | 70% |
| F4 | 92% | 77% | 68% | 57% |
| F5.6 | 88% | 68% | 56% | 41% |
| F7.1 | 85% | 60% | 45% | 28% |
| F8 | 83% | 55% | 39% | 20% |
| F9 | 81% | 49% | 32% | 13% |
| F11 | 77% | 39% | 20% | 2% |
これは収差のない理想のレンズの MTF(回折限界)を、F値ごとに計算したグラフと表です。
波長 550nm、円形の絞り、収差のない理想のレンズでの回折限界MTF。
※画素そのものの大きさによるボケ、センサーのローパスフィルター、ベイヤー配列、現像処理は含みません。
一般的にMTF 50%~はしっかり解像して見え、10%を下回るとほぼ解像しないといわれています。
中間が広いですが、私の経験では以下のような感じかなと思います。
| MTF | 見え方 |
|---|---|
| 50%~ | しっかり解像する |
| 30%~49% | 解像する |
| 20~29% | 見えるが眠い、RAW現像である程度補正できる。 |
| 10~19% | かろうじて見える、RAW現像でもかなりきつい。 |
| ~9% | 解像しない |
これを各F値xボディに当てはめると、
| F値 | 30本/mm | R1・R6 II の上限 (約83本/mm) |
R5 II の上限 (約114本/mm) |
R7 の上限 (約156本/mm) |
|---|---|---|---|---|
| F2.8 | 94% | しっかり解像する | しっかり解像する | しっかり解像する |
| F4 | 92% | しっかり解像する | しっかり解像する | しっかり解像する |
| F5.6 | 88% | しっかり解像する | しっかり解像する | 解像する |
| F7.1 | 85% | しっかり解像する | 解像する | 見えるが眠い |
| F8 | 83% | しっかり解像する | 解像する | かろうじて見える |
| F9 | 81% | 解像する | 見えるが眠い | かろうじて見える |
| F11 | 77% | 解像する | かろうじて見える | 解像しない |
なお理想のレンズでの話なので境界近くにあるものは下の評価に振っています。
もちろんR1/R6 IIがすべて解像するから良いという話ではなく、野鳥撮影ではトリミングしますので画素数が足りなければそもそも解像はしません。
EOS R5 Mark IIではF9くらいまでならRAW補正でなんとかなりますが、EOS R7はF7.1でRAW補正前提、F8以上はかなり厳しいということがわかります。
他社の高画素機も大体4500万〜6000万画素台に収まっていますが、回折との兼ね合いも理由の1つかもしれません。
はっきり言ってEOS R7のようなボディは使うレンズで大きく評価が変わりますし、難しいボディではありますが、発売してくれているCanonには頭が下がりますね。
7-4. 理論値とのギャップ
では、ここでレンズの評価をするにあたって使える指標を考えてみます。
理論値とのギャップ = 30lp/mmのスコア − 理論値
(マイナスが小さいほど優秀)
F値によって30lp/mmの理論値は計算できるので、それぞれのレンズがどれだけ頑張って収差をおさえているかが理論値との差でわかります。
割合でもいいのですが、私は差の方が直感的な感じはします。
こうやってみるとEF600mm F4L IS II USMが化け物で、次いで800mmという焦点距離を考慮するとEF800mm F5.6L IS USMという感じでしょうか。
800mmではEF800mm F5.6L IS USMの方が解像力は高いのですが、テレコンあり840mm F5.6でこの解像力はちょっとおかしいですねEFロクヨンII型🤣
① マスターレンズ状態では中央はほとんど理論値に近いスコア
ほとんどのレンズは、理論値とのギャップは−0.01~−0.03くらいで抑えられていて、収差の補正という意味では重量やサイズなどを気にしなければ限界に近いところまで突き詰められていると言えます。
つまり、実際のところ画質面では大砲はテレコンなしならば、ほぼF値が中央解像力の評価基準となっていると考えて良かったりします。
ただRF800mm F5.6L IS USMとRF1200mm F8L IS USMは軽量化やサイズダウンのために「拡大光学系」という名のx2テレコンのようなものをかました400mm F2.8、600mm F4なので、低いスコアになっているので注意が必要です。
もちろん30lp/mmはスコアが悪いけど、156lp/mmでは理論値とのギャップがあまり広がらない特性をもったレンズの可能性もあるのですが、そこは実際に買って使い倒してみないとわかりませんね...。
② ズームレンズは中央から離れると極端にスコアが低下しがち
今回のズームレンズ(RF100-500、RF200-800)は、中央の理論値とのギャップが大砲と同じくらい良いスコアがでています。
しかしズームレンズは中央から離れると一気に解像力が低下する傾向があります。
これは主に残った収差によるものですが、口径食による回折も一因と考えられます。
放射方向と同心円方向の解像力もどんどん離れていきますので「像が流れる」ような写真になり、ズームレンズは中央付近の解像力が高くてもシャッキリしない写真になりがちです。
MTFはスコアの高さも大事ですが、スコアの安定度も重要になります。
③ テレコンは理論値からの乖離が大きい
テレコンはそのレンズ専用のものではなく、レンズの枚数も増えることになるため、それぞれのF値の理論値とは大きく乖離していきます。
簡単に言うとマスターレンズ状態の「ボヤケ」がそのまま拡大されるようなものなので、当然マスターレンズよりは理論値との乖離が大きくなるわけですね。
さらに、この乖離の度合いがレンズによって大きく違うというのが分かると思います。
RFロクヨンはテレコン時、EFII型より30lp/mmで0.01ほど低いスコアとなってます。
たった0.01に見えますが、8章で書くとおりこの差は細かい周波数ほど広がるので、EOS R7のような画素の細かいボディではかなり大きな違いとしてのしかかってきます。
重量を抑えるために蛍石を小さくしていたりとか、そういうところが影響していると思われます。
テレコン装着時の性能は大砲でも性能差が大きくでる要素ですので、テレコンを使う人は装着時のF値がどれだけ理論値と乖離しているかを注意してみておくのをオススメします。
8. 30本/mm の評価は、EOS R7 でも役立つ
ここまで読むと、「R7 のナイキスト周波数は約 156本/mm なのに、30本/mm の値だけで評価して意味があるのか?」と感じるかもしれません。
理屈の上では、30本/mm の値はセンサーの限界付近の解像力を直接は表していません。
それでも私の経験では、キヤノンが公開している 30本/mm の値は、R7 で使ったときの描写を予測する基準として十分に使えます。
簡単に言うと30lp/mmでの0.01といった小さな違いが156lp/mmでは大きくなるわけですが、一応30lp/mmの値は156lp/mm時の値を想像できる程度の粒度はあるということですね。
もちろん実際にどうかはわかりませんが、経験では30lp/mmの値の序列がEOS R7で実際に各レンズを使ってみて覆されているような例はないように感じています。
9. 回折はF値で決まるのに、絞るとシャープになる理由
ここまでの話だと、「F値は小さいほど良い。絞ると回折で解像が落ちる」となりそうです。
ところが実際には、絞ったほうが写真がシャープに見えることがよくあります。
これは、絞ると次の 3 つが同時に起きるからです。
・収差が減る
周辺の乱れた光がカットされ、レンズ本来の像が締まる。
開放で収差が残っているレンズほど効果が大きい。
・回折が増える
細かい模様のコントラストが下がる。
画素の細かいボディほど目に付く。
・被写界深度が深くなる
ピントが合って見える前後の範囲が広がる。
最近の超望遠は開放から回折の壁のすぐ下にいるので、絞っても収差の改善はわずかです。
野鳥撮影で効いてくるのは、3 つ目の被写界深度です。
たとえば 600mm で 10m 先のカワセミを撮るとします。
R5 Mark II の 2 画素分(約 8.8µm)のボケまでを「ピントが合っている」とみなすと、ピントの合う前後の幅はおおよそ次のとおりです。
※ピントのボケだけの計算です。F8では回折のにじみ自体が約10.7µmあるので、実際の見え方はもう少し厳しくなります。
| F値 | ピントの合う前後の幅(概算) | R5 II の上限(約114本/mm)での回折限界 MTF |
|---|---|---|
| F4 | 約 1.8cm | 68% |
| F5.6 | 約 2.6cm | 56% |
| F8 | 約 3.7cm | 39% |
| F11 | 約 5.1cm | 20% |
カワセミの目から嘴の先までは数 cm あります。少し斜めを向いただけで、F4 では目に合わせると嘴の先がボケの中に入ってしまいます。
この場合、F5.6 や F8 に絞って失う回折のぶんより、嘴の先までピントが届くことで得るシャープさのほうが大きく、写真全体としては絞ったほうがシャープに見えます。
逆に、真横を向いた鳥で被写界深度が足りているなら、絞るほど細部のコントラストが下がるだけです。
「絞るとシャープになる」のも「絞ると回折で甘くなる」のも、どちらも条件次第で正しいのです。
実際の野鳥撮影では、これに加えて被写体ブレ、手ぶれ、陽炎(大気の揺らぎ)、ピントの精度も効いてきます。
遠くの鳥ほど陽炎の影響が大きくなり、レンズの差より空気の状態で写りが決まることも珍しくありません。
10. 自分でレンズを評価する
ここまででレンズの解像力を測るための要素をいくつか紹介してきましたが、ではそれらを使ってどうレンズを評価するか。
1. F値から回折の限界を知る
レンズのF値から回折の理論限界値を知る
2. 公開 MTF で収差の補正具合を見る
画面中央の 30本/mm の公開値を、F値の理論値と比較、カーブも確認する
3. 自分のボディの画素ピッチに当てはめる
レンズの解像力が自分のボディの画素ピッチで耐えられるのかを確認
4. 焦点距離と撮影距離から、被写体の大きさを考える
スコアが足りなくても、長焦点距離だったり被写体までの距離が近ければ問題ない場合がある。
たとえば、仮に「600mm F6.3」という新しいレンズが出たとします。
・F6.3 の回折限界は、30本/mm で約 0.87、R5 Mark II の上限(約114本/mm)で
約 51%、R7 の上限(約156本/mm)で約 35%。
・公開 MTF の中央 30本/mm が 0.84〜0.85 だったならギャップは−0.02〜−0.03程度、優秀なレンズといえる
⇒ おそらく期待を裏切らない性能
・EOS R7では理論値でも約35%(F5.6なら約41%)で、収差を含めるとF5.6レンズより一段劣る
⇒ この時点でEOS R7では少し眠い画質でRAW加工が必須
・ただし、600mmなので35mm換算960mmという焦点距離で撮影できる
⇒ 小鳥くらいのサイズだと距離20m〜25mくらいまでならば満足できる結果を得られそう
F6.3である以上は解像力に過剰な期待を持つのは無駄ですが、準大砲くらいの性能はありそうで、
これでFE600mm F6.3 GM OSSのように重量1kgというずば抜けた機動性があれば「買い」と考えられるわけですね。
またEOS R5 Mark IIならF8くらいまでは許容ですが、x1.4テレコンを付けるとF9相当になるので、テレコン耐性が高い場合に限りアリという感じです。
まとめ
要点
・レンズの解像力を低下させる主なメカニズム的な原因は収差と回折。
収差はレンズの出来で決まり、回折は F値で決まる。
・回折は理想のレンズでも避けられない。
どれだけ高価なレンズでも、F値で決まる回折の壁は越えられない。
・回折のにじみの大きさは焦点距離に依存しない。
ただし焦点距離が長ければ、被写体を大きく写せるぶん細部の記録で有利。
・画面の端にいくほど、口径食による回折や残った収差の影響で解像力は低下する。
・回折の影響がどれだけ写真に写るかはボディの画素ピッチで変わる。
だから違うボディで使用しているレビューや作例だけでは判断できない。
・キヤノンの公開 MTF は波動光学的なMTFなので、
同じ F値の理論値と比べれば、収差の補正具合がわかる。
・30本/mm の公開値は、画素の細かい R7 でもレンズを評価する基準として使える。
どこまで解像するかは、画素ピッチと照らし合わせて考える。
・絞るとシャープになるかどうかは、収差・回折・被写界深度のどれが勝つかで決まる。
SONY FE600mm F6.3 GM OSS
今回、SONY FE600mm F6.3 GM OSSが発売されましたが、このレンズが凄いところはGMらしく収差がよく抑えられていそうなうえに、約1kgという軽量だというところです。
このレンズはα1 IIくらいまでなら十分解像しますが、α7R VIでは解像はするものの少しだけ怪しくなってくるんじゃないかなと思います。
SONYにはEOS R7のような狭い画素ピッチのボディはないのでそれ以上はわかりませんが、もしあったとしたらRAW加工前提くらいの解像力なんじゃないかなと。
更にF値が高いとISOが高くなりがちでノイズによるディテール損失が大きくなるので、さすがにロクヨンの方が解像力や画質では大きく有利ということですね。
このレンズの特徴はとにかく単焦点600mm F6.3で約1kgという重量でNikon Z 600mm f/6.3よりさらに約400g軽く、野鳥撮影者の常識を破壊してしまった点です🤣
はっきり言って、解像力が多少厳しかったとしてもそれを補って余りあるくらい強烈ですね。
さて、なんとなくレンズの解像力の評価の方法について書いてみました。
知り合いに光学専門の技術者な人がいるので、いい加減な内容で怒られそうですが🤣
では初心者の方のレンズ選びの参考になれば🫡